AAR/女王想話/第四話 ~西の冠を頭上に抱き、東の冠を抱えし者~
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[[AAR/女王想話]]
* 第四話 ~西の冠を頭上に抱き、東の冠を抱えし者~ [#iaf68...
**役者 [#e5acbb38]
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
西暦1534年。
イングランド王ジェームズは即位してすぐに5万の兵を伴ってバ...
ローマの人々は歓喜した。
信仰の守護者であるカトリックの王が邪教の輩を成敗する為に...
帝国諸侯が次々とプロテスタントに改宗し、真なる信仰の危機...
若き王はシスティーナ礼拝堂を訪れ、時の教皇クレメンス7世...
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「若き王よ、何故震えているのですか?」
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
クレメンス7世は足に口付けをしている王が小刻みに震えてい...
ジェームズは教皇に跪いたまま、激しい想いに心を掻き毟られ...
「神の代理人たる教皇の徳と神性が私を激しく打つのです。貴...
クレメンス7世はこの若者の言葉に感激した。
思えば教皇としてクレメンス7世は辛い人生を送ってきた。
ドイツ皇帝オーストリアとの対立、宗教対立、カステラ王国か...
全てがこの教皇の逆境となって襲い掛かり、枕を高くして眠れ...
「立ちなさい、偉大なるイングランドの王よ」
「はい」
「此度の出兵は邪教の徒を打つ為と聞き及んでおります。…私は...
「…それはなりません。まずは私が邪教の軍とあたり、神の意思...
教皇はますます感激した。
まだ16歳の王がそこまでカトリックのことを考えていたとは。
あるいは周囲の側近の入れ知恵なのかもしれないが、苦難に喘...
「私はすぐに東の地へ立ちます。…祝福をいただけますか?」
「……真なる信仰の守護者に神の祝福を。アーメン」
ジェームズが教皇から祝福を受けローマを発ち、2週間後のこと...
一人の枢機卿が慌しくバチカン宮殿のクレメンス7世の元へ走...
「イングランド王国が……宣戦布告いたしました!!」
「神の御許で騒がしいぞ。かの国の王が神の信仰を確かめる為...
「それが……オスマン帝国のほうに向かっていたイングランド海...
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「ビザンチンだと!?どういうことだ……」
「それもローマ法王に祝福を受けビザンチン帝国を保護したと...
謀られた……。
邪教とはイスラムではなく、正教のことだったのか。
クレメンス7世はあの若者がとんでもない役者だという事を思...
イングランド王ジェームズ1世が即位してまず最初にしたこと...
**華麗なる優雅 [#k9e7a648]
「あれは悔しさのあまりに震えていたのですか?」
私は昨日クレメンス7世に謁見したときのことを主に尋ねてい...
「まさか」
微笑王と綽名されることになるジェームズは綽名の通り、常に...
「微笑みが人を油断させ、調子を狂わせるらしいよ」
王は過去に出会った得体の知れない道化師にアドバイスされた...
「あの茶番劇が可笑しくってさ。噴出さないように堪えていた...
「カステラ王国侵略の件、了承させました」
「さすがヨーク公。レスター伯に認められた武勇に加えて政も...
「恐れ入ります」
その手の皮肉に慣れていた私は軽く受け流す。
ジェームズ王は自らが偉大なる女王の直系でないことを意識し...
私が幼い頃に見た女王は年老いてもなお咲き誇る薔薇のように...
この王はどうだろうか。
得体の知れぬ何かを秘めているものの、王としての覇気がまる...
&ref(http://kura3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「ヨーク公はシスティナ礼拝堂を見てどう思った?」
「絵画が咲き乱れるような…まさしくルネッサンスの粋を集めた...
「ははっ、実に君らしい表現だね」
王の台詞に頭に血が少しばかり昇った。
過去にも今は元帥のクソ野郎に同じことを言われた記憶が蘇っ...
奴は常にこう言うのである。
……実にお前らしいつまらない表現だ、と。
「僕はね、あの礼拝堂とバチカン宮殿を見て思ったよ」
…認めよう。
私は次の言葉を聴くまで完全にこの王のことを無邪気なだけの...
「あの腐った内装に吐き気がするってね……だから丸ごとバチカ...
「それに無知蒙昧な民は外装までぶっこわせっていうけどさ、...
王は終止感情が見えぬよう微笑みの仮面を貼り付けたまま私に...
枢機卿の座をイングランド派によって独占。
そしてイングランド主導によってカトリックの改革を成せ、と。
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「いずれ我々の王が内より教会を改革するであろう」
それはかつてオリバー・ダドリー卿がカトリックに絶望しプロ...
いいさ、ついていってやる。
折角苦労して一族を宥めすかして就かせた王だ。
精々楽しませてもらおうじゃないか。
私はその後、思い知らされることになる。
この自分より遥かに年下の王がとてつもない怪物だったという...
~ 外務長官ヨーク公ジョージの述懐 ~
**二人の談話 [#r2d38360]
さあ、十字軍だ!
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
イングランド派の枢機卿が長時間に渡るコンクラーベの末に選...
西暦1543年、パウルス3世は対オスマンの十字軍を提唱。
13世紀以来絶えて久しい第十次十字軍が始まろうとしていた。
「これに馳せ参じたのが我等が王ってな。そもそも自ら教皇を...
そう言って肩をすくめたのはデイビット・ハウ元帥だった。
天才的なまでの軍事的才能は異宗派の自国民相手にしか腕を振...
しかし4年前に神聖ローマ帝国皇帝と矛を交わし、圧倒的な勝...
「卿は王のことをどう評価する?」
東欧の地図が置かれた机を挟み対峙していたのは元帥の長年の...
イングランドにおいて新設された国務長官(Secretaries of Sta...
「常に傍にいるお前のほうが王のことは良く知ってるだろう」
「それはそうだが……4年間お仕えして未だに人となりが掴めん」
デイビッドは器用な貴公子が珍しく溜息をついて途方に暮れて...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「そうだな、前のオーストリアとの戦の時に俺は王に5万の援...
「あの王は軍事面ではお前に頼りきっているから要求通りの数...
「……2万だ」
「どういう意味だ?」
「俺も処世術というものを心得ている。概ね援軍を要請した際...
ヨーク公は息を飲んだ。
元帥の言わんとしていることが飲み込めたからである。
「王は俺が本当に求めていた数丁度を寄越したってわけさ。ア...
年下の若き王が底知れぬ才覚を見せる。
これが神に選ばれた者に与えられる恩恵なのか…?
本来なら仕える王が優秀なことは喜ばしいことなのに、ヨーク...
「話は変わるが俺は憤慨している。この前これを使った新戦術...
&ref(http://kura3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
そういってデイビッドは壁に立てかけてあった一丁の筒をヨー...
ヨーク公の太い右腕が感じ取った長く重い筒はいわゆる火薬銃...
「同席していたネーデルラント総督が横槍を入れやがった」
「オラニエ公が?まだ彼も20歳になって家督を継いだばかり...
「ウィレムは俺様の考案した戦術案は元帥にしか扱えない代物...
この時、元帥が王に考案して火薬銃の量産を迫ったのは前年に...
火薬筒と共に放られた羊皮紙を覗き込んだヨーク公は一目でそ...
今は政治畑のヨーク公も元帥と共にオリバー伯陣営で戦った騎...
「確かにこの陣形は追撃戦に欠けるように見受けられるが?」
「そうだ。俺様のような天才なら状況に応じて騎兵で追撃をか...
「彼の意見ももっともだな。……それで?」
「自分がこの戦術に機動性を加えて汎用性を作ると提案してき...
ネーデルラントの若き息吹が芽吹いている。
政治軍事の中心に居る彼らにとって首都アントワープにいる若...
「ムカつくからイチャモンつけてもっと研究して再提出しろっ...
「……遺憾ながら同感だな」
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
長きに渡る宗教内乱は王の圧倒的な勝利、レスター伯の努力と...
そして少しずつではあるが長年に渡る内乱によって枯渇してい...
「そういえば卿が叩きのめしたオーストリアだが…」
&ref(http://kura3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
―神聖ローマ帝国領邦を巡って不幸な行き違いがあったが我らの...
「といった具合に戦が終わり次第、同盟の再締結を申し出てき...
「王というのも難儀な生き物だな」
~ フランソワ・ラブレー著「ジョージとハウ」より ~
**芳しきは硝煙の香り [#lcdd5b61]
&ref(http://kura3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
アッラーフ・アクバル
私は神の偉大さを讃え馬を走らせる。
周囲はあの偉大な征服を思い出させるウルバン砲の火薬のよう...
アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イラーッラー
ラマダーン月に西から神を騙る背教者が懲りずに過去の遺物「...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
そして時を置かずに聖戦の名の元に我等がスルタンの征服せし...
卑劣なる異教徒は手薄になったイスタンブールの包囲を開始。
&ref(http://kura3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
すでにアッラーの加護の元、海上では当然の勝利を収めた。
その勢いの元、首都包囲を破る為にスルタンが率いる精鋭軍団...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッラー
歳は老いたもののアッラーに恥じぬよう肉体の鍛錬、装備の手...
周囲で私と共に駆ける騎士達も同様だ。
ハイヤー・アラルファラー
なのにどうしたことだろう。
白煙に包まれて姿が見えない敵の陣を前にして、誇りが平伏し...
一発の鉛弾が易々と私の鎖帷子を貫き、耳をつんざく愛馬の悲...
「イスタン…が陥落し……らしい…!」
誰かの声が聞こえる。
騎士の魂を怒号と共に奪い去る忌まわしき兵器め。
私は時代の変遷に取り残されているのだろうか…いや、奴らが早...
アッラーフ・アクバル
ラー・イラーハ・イラーッラー……。
アッラーは偉大なり。アッラーの他に神はなし……。
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
~ とあるオスマン騎兵の述懐 ~
**西の冠を抱きし者 [#x336f028]
7人の選定侯達はそれぞれ複雑な思いで若者を見つめていた。
自身の立場の危うさと宗教的混乱から僅か15年で立ち直り、...
王の右にはヨーク公ジョージ・プランタジネットがいる。
もはや彼の策謀により枢機卿に成るにはイングランドに媚を売...
王の左にはデイビット・ハウ元帥がいる。
元帥は神聖ローマ帝国皇帝、オスマン・トルコのスルタン、ス...
キリスト教徒がマルスを名乗るとは何事かと糾弾されそうだが...
「大体マルスなんて名乗っちまったもんだから、王に自らの住...
王は周囲が見守る中、一つ歩を進めた。
数々の皇帝の即位を見つめてきたアーヘン大聖堂。
その壇上には自ら赴いて来た教皇パウルス3世が宝冠を手にし...
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西暦1551年、イングランド王ジェームズ1世は神聖ローマ帝国...
外つ国の王が初めて神聖ローマ帝国の皇帝となった瞬間であっ...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
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1554年、ジェームズ1世は帝国に改革を及ぼすことを宣言。
ドイツ諸邦が帝位を巡る争いは外つ国の強大な力によってひと...
かつては女王の直系の子孫でないことから軽んじられ、様々な...
しかし今は全ての民からイングランドに更なる繁栄をもたらし...
&ref(http://kura2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
そして長きに渡るイベリア遠征に一区切りをつけようとポルト...
イングランドを立て直した二人の将の後を追うように皇帝は床...
自らの寿命を悟った皇帝は同じ名を持つ後継者を呼び寄せた。
&ref(http://kura1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/20100...
「ジェームズ…いや、次なる皇帝よ」
「何を気弱なことをおっしゃりますか。早く元気になって政を...
「すでに回顧録も記録させた。……しかし皇帝に伝えておかねば...
ジェームズ1世と6つしか歳の違わないジェームズ2世の関係...
ジェームズ2世はヨーク家とランカスター家の末裔であり、ジ...
彼らの血の繋がりを求めるならば狂王ヘンリー6世にまで遡ら...
それでもジェームズ2世は1世を王として、兄として慕いその...
そしてイングランドが誇りを取り戻すのを傍らで共に喜んでい...
「貴殿の子供はマリー姫しかいなかったな。だが女王は許さぬ...
「……はい、確かに承りました」
この遺言は後のイングランドに混乱を招くことになる。
それはジェームズ1世の出自があやふやなのに対し、ジェーム...
ジェームズ2世は家の繋がり、血の繋がりを重視する大貴族の...
あらゆる慣習に頓着せず破壊し続けた病に伏せる皇帝はそのこ...
(……ま、こいつが言うこと守るなんてこれっぽちも思っちゃい...
こうして怪物と称された皇帝は崩御した。
運命の悪戯が彼の人生を揺るがしたが、皇帝がその人生をおお...
~ 宮廷歴史家 リチャード・ギボン著「ジェームズ1世治世...
第四話 ~西の冠を頭上に抱き、東の冠を抱えし者~ 完
次回 第五話 ~大英帝国誕生~ に続く。
*[[第五話 ~大英帝国誕生~>AAR/女王想話/第五話 ~大英帝国...
[[詳しい解説はハートマン軍曹白熱教室 世界征服編第5回にて:...
終了行:
[[AAR/女王想話]]
* 第四話 ~西の冠を頭上に抱き、東の冠を抱えし者~ [#iaf68...
**役者 [#e5acbb38]
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西暦1534年。
イングランド王ジェームズは即位してすぐに5万の兵を伴ってバ...
ローマの人々は歓喜した。
信仰の守護者であるカトリックの王が邪教の輩を成敗する為に...
帝国諸侯が次々とプロテスタントに改宗し、真なる信仰の危機...
若き王はシスティーナ礼拝堂を訪れ、時の教皇クレメンス7世...
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「若き王よ、何故震えているのですか?」
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クレメンス7世は足に口付けをしている王が小刻みに震えてい...
ジェームズは教皇に跪いたまま、激しい想いに心を掻き毟られ...
「神の代理人たる教皇の徳と神性が私を激しく打つのです。貴...
クレメンス7世はこの若者の言葉に感激した。
思えば教皇としてクレメンス7世は辛い人生を送ってきた。
ドイツ皇帝オーストリアとの対立、宗教対立、カステラ王国か...
全てがこの教皇の逆境となって襲い掛かり、枕を高くして眠れ...
「立ちなさい、偉大なるイングランドの王よ」
「はい」
「此度の出兵は邪教の徒を打つ為と聞き及んでおります。…私は...
「…それはなりません。まずは私が邪教の軍とあたり、神の意思...
教皇はますます感激した。
まだ16歳の王がそこまでカトリックのことを考えていたとは。
あるいは周囲の側近の入れ知恵なのかもしれないが、苦難に喘...
「私はすぐに東の地へ立ちます。…祝福をいただけますか?」
「……真なる信仰の守護者に神の祝福を。アーメン」
ジェームズが教皇から祝福を受けローマを発ち、2週間後のこと...
一人の枢機卿が慌しくバチカン宮殿のクレメンス7世の元へ走...
「イングランド王国が……宣戦布告いたしました!!」
「神の御許で騒がしいぞ。かの国の王が神の信仰を確かめる為...
「それが……オスマン帝国のほうに向かっていたイングランド海...
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「ビザンチンだと!?どういうことだ……」
「それもローマ法王に祝福を受けビザンチン帝国を保護したと...
謀られた……。
邪教とはイスラムではなく、正教のことだったのか。
クレメンス7世はあの若者がとんでもない役者だという事を思...
イングランド王ジェームズ1世が即位してまず最初にしたこと...
**華麗なる優雅 [#k9e7a648]
「あれは悔しさのあまりに震えていたのですか?」
私は昨日クレメンス7世に謁見したときのことを主に尋ねてい...
「まさか」
微笑王と綽名されることになるジェームズは綽名の通り、常に...
「微笑みが人を油断させ、調子を狂わせるらしいよ」
王は過去に出会った得体の知れない道化師にアドバイスされた...
「あの茶番劇が可笑しくってさ。噴出さないように堪えていた...
「カステラ王国侵略の件、了承させました」
「さすがヨーク公。レスター伯に認められた武勇に加えて政も...
「恐れ入ります」
その手の皮肉に慣れていた私は軽く受け流す。
ジェームズ王は自らが偉大なる女王の直系でないことを意識し...
私が幼い頃に見た女王は年老いてもなお咲き誇る薔薇のように...
この王はどうだろうか。
得体の知れぬ何かを秘めているものの、王としての覇気がまる...
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「ヨーク公はシスティナ礼拝堂を見てどう思った?」
「絵画が咲き乱れるような…まさしくルネッサンスの粋を集めた...
「ははっ、実に君らしい表現だね」
王の台詞に頭に血が少しばかり昇った。
過去にも今は元帥のクソ野郎に同じことを言われた記憶が蘇っ...
奴は常にこう言うのである。
……実にお前らしいつまらない表現だ、と。
「僕はね、あの礼拝堂とバチカン宮殿を見て思ったよ」
…認めよう。
私は次の言葉を聴くまで完全にこの王のことを無邪気なだけの...
「あの腐った内装に吐き気がするってね……だから丸ごとバチカ...
「それに無知蒙昧な民は外装までぶっこわせっていうけどさ、...
王は終止感情が見えぬよう微笑みの仮面を貼り付けたまま私に...
枢機卿の座をイングランド派によって独占。
そしてイングランド主導によってカトリックの改革を成せ、と。
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「いずれ我々の王が内より教会を改革するであろう」
それはかつてオリバー・ダドリー卿がカトリックに絶望しプロ...
いいさ、ついていってやる。
折角苦労して一族を宥めすかして就かせた王だ。
精々楽しませてもらおうじゃないか。
私はその後、思い知らされることになる。
この自分より遥かに年下の王がとてつもない怪物だったという...
~ 外務長官ヨーク公ジョージの述懐 ~
**二人の談話 [#r2d38360]
さあ、十字軍だ!
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イングランド派の枢機卿が長時間に渡るコンクラーベの末に選...
西暦1543年、パウルス3世は対オスマンの十字軍を提唱。
13世紀以来絶えて久しい第十次十字軍が始まろうとしていた。
「これに馳せ参じたのが我等が王ってな。そもそも自ら教皇を...
そう言って肩をすくめたのはデイビット・ハウ元帥だった。
天才的なまでの軍事的才能は異宗派の自国民相手にしか腕を振...
しかし4年前に神聖ローマ帝国皇帝と矛を交わし、圧倒的な勝...
「卿は王のことをどう評価する?」
東欧の地図が置かれた机を挟み対峙していたのは元帥の長年の...
イングランドにおいて新設された国務長官(Secretaries of Sta...
「常に傍にいるお前のほうが王のことは良く知ってるだろう」
「それはそうだが……4年間お仕えして未だに人となりが掴めん」
デイビッドは器用な貴公子が珍しく溜息をついて途方に暮れて...
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「そうだな、前のオーストリアとの戦の時に俺は王に5万の援...
「あの王は軍事面ではお前に頼りきっているから要求通りの数...
「……2万だ」
「どういう意味だ?」
「俺も処世術というものを心得ている。概ね援軍を要請した際...
ヨーク公は息を飲んだ。
元帥の言わんとしていることが飲み込めたからである。
「王は俺が本当に求めていた数丁度を寄越したってわけさ。ア...
年下の若き王が底知れぬ才覚を見せる。
これが神に選ばれた者に与えられる恩恵なのか…?
本来なら仕える王が優秀なことは喜ばしいことなのに、ヨーク...
「話は変わるが俺は憤慨している。この前これを使った新戦術...
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そういってデイビッドは壁に立てかけてあった一丁の筒をヨー...
ヨーク公の太い右腕が感じ取った長く重い筒はいわゆる火薬銃...
「同席していたネーデルラント総督が横槍を入れやがった」
「オラニエ公が?まだ彼も20歳になって家督を継いだばかり...
「ウィレムは俺様の考案した戦術案は元帥にしか扱えない代物...
この時、元帥が王に考案して火薬銃の量産を迫ったのは前年に...
火薬筒と共に放られた羊皮紙を覗き込んだヨーク公は一目でそ...
今は政治畑のヨーク公も元帥と共にオリバー伯陣営で戦った騎...
「確かにこの陣形は追撃戦に欠けるように見受けられるが?」
「そうだ。俺様のような天才なら状況に応じて騎兵で追撃をか...
「彼の意見ももっともだな。……それで?」
「自分がこの戦術に機動性を加えて汎用性を作ると提案してき...
ネーデルラントの若き息吹が芽吹いている。
政治軍事の中心に居る彼らにとって首都アントワープにいる若...
「ムカつくからイチャモンつけてもっと研究して再提出しろっ...
「……遺憾ながら同感だな」
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長きに渡る宗教内乱は王の圧倒的な勝利、レスター伯の努力と...
そして少しずつではあるが長年に渡る内乱によって枯渇してい...
「そういえば卿が叩きのめしたオーストリアだが…」
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―神聖ローマ帝国領邦を巡って不幸な行き違いがあったが我らの...
「といった具合に戦が終わり次第、同盟の再締結を申し出てき...
「王というのも難儀な生き物だな」
~ フランソワ・ラブレー著「ジョージとハウ」より ~
**芳しきは硝煙の香り [#lcdd5b61]
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アッラーフ・アクバル
私は神の偉大さを讃え馬を走らせる。
周囲はあの偉大な征服を思い出させるウルバン砲の火薬のよう...
アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イラーッラー
ラマダーン月に西から神を騙る背教者が懲りずに過去の遺物「...
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そして時を置かずに聖戦の名の元に我等がスルタンの征服せし...
卑劣なる異教徒は手薄になったイスタンブールの包囲を開始。
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すでにアッラーの加護の元、海上では当然の勝利を収めた。
その勢いの元、首都包囲を破る為にスルタンが率いる精鋭軍団...
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アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッラー
歳は老いたもののアッラーに恥じぬよう肉体の鍛錬、装備の手...
周囲で私と共に駆ける騎士達も同様だ。
ハイヤー・アラルファラー
なのにどうしたことだろう。
白煙に包まれて姿が見えない敵の陣を前にして、誇りが平伏し...
一発の鉛弾が易々と私の鎖帷子を貫き、耳をつんざく愛馬の悲...
「イスタン…が陥落し……らしい…!」
誰かの声が聞こえる。
騎士の魂を怒号と共に奪い去る忌まわしき兵器め。
私は時代の変遷に取り残されているのだろうか…いや、奴らが早...
アッラーフ・アクバル
ラー・イラーハ・イラーッラー……。
アッラーは偉大なり。アッラーの他に神はなし……。
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~ とあるオスマン騎兵の述懐 ~
**西の冠を抱きし者 [#x336f028]
7人の選定侯達はそれぞれ複雑な思いで若者を見つめていた。
自身の立場の危うさと宗教的混乱から僅か15年で立ち直り、...
王の右にはヨーク公ジョージ・プランタジネットがいる。
もはや彼の策謀により枢機卿に成るにはイングランドに媚を売...
王の左にはデイビット・ハウ元帥がいる。
元帥は神聖ローマ帝国皇帝、オスマン・トルコのスルタン、ス...
キリスト教徒がマルスを名乗るとは何事かと糾弾されそうだが...
「大体マルスなんて名乗っちまったもんだから、王に自らの住...
王は周囲が見守る中、一つ歩を進めた。
数々の皇帝の即位を見つめてきたアーヘン大聖堂。
その壇上には自ら赴いて来た教皇パウルス3世が宝冠を手にし...
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1554年、ジェームズ1世は帝国に改革を及ぼすことを宣言。
ドイツ諸邦が帝位を巡る争いは外つ国の強大な力によってひと...
かつては女王の直系の子孫でないことから軽んじられ、様々な...
しかし今は全ての民からイングランドに更なる繁栄をもたらし...
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そして長きに渡るイベリア遠征に一区切りをつけようとポルト...
イングランドを立て直した二人の将の後を追うように皇帝は床...
自らの寿命を悟った皇帝は同じ名を持つ後継者を呼び寄せた。
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「ジェームズ…いや、次なる皇帝よ」
「何を気弱なことをおっしゃりますか。早く元気になって政を...
「すでに回顧録も記録させた。……しかし皇帝に伝えておかねば...
ジェームズ1世と6つしか歳の違わないジェームズ2世の関係...
ジェームズ2世はヨーク家とランカスター家の末裔であり、ジ...
彼らの血の繋がりを求めるならば狂王ヘンリー6世にまで遡ら...
それでもジェームズ2世は1世を王として、兄として慕いその...
そしてイングランドが誇りを取り戻すのを傍らで共に喜んでい...
「貴殿の子供はマリー姫しかいなかったな。だが女王は許さぬ...
「……はい、確かに承りました」
この遺言は後のイングランドに混乱を招くことになる。
それはジェームズ1世の出自があやふやなのに対し、ジェーム...
ジェームズ2世は家の繋がり、血の繋がりを重視する大貴族の...
あらゆる慣習に頓着せず破壊し続けた病に伏せる皇帝はそのこ...
(……ま、こいつが言うこと守るなんてこれっぽちも思っちゃい...
こうして怪物と称された皇帝は崩御した。
運命の悪戯が彼の人生を揺るがしたが、皇帝がその人生をおお...
~ 宮廷歴史家 リチャード・ギボン著「ジェームズ1世治世...
第四話 ~西の冠を頭上に抱き、東の冠を抱えし者~ 完
次回 第五話 ~大英帝国誕生~ に続く。
*[[第五話 ~大英帝国誕生~>AAR/女王想話/第五話 ~大英帝国...
[[詳しい解説はハートマン軍曹白熱教室 世界征服編第5回にて:...
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