AAR/女王想話/第八話 ~孤独なる人~
をテンプレートにして作成
[
トップ
] [
新規
|
一覧
|
検索
|
最終更新
|
ヘルプ
]
開始行:
[[AAR/女王想話]]
*第八話 ~孤独なる人~ [#h2070fbd]
**庶子王誕生 [#wbfe7988]
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202104...
五賢帝最後の皇帝、フレドリック2世にはオクタウィウスと名付...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202104...
皇太子オクタウィウスは九歳の時に病死した。
悲しみに暮れた王は宮廷に使える侍女に手を出し、一人の息子...
フレドリック2世はこの赤子を亡くなったオクタウィウスの代わ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
新たなる皇太子の名前はウィリアム。
皇帝が継嗣にローマ風の名前をつけることを改めたのは何か思...
ランカスターの血統を男児を通じて残す。
この事には何ら問題がなかった。
不満を覚えたのは大英帝国の民衆と聖職者である。
清らかな信仰を民衆と聖職者には半ば強要しているのに、自ら...
世の中に矛盾は数あれど、施政者が堂々とやるには政治面での...
それでもフレドリック2世の成した偉業を前にして人々は表立っ...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
庶子ウィリアムにとって最も不幸な出来事が起きる。
本来ならば立場の弱い庶子の皇太子に対して父が後見人として...
しかしながら1693年、その役目を放棄し、まだ8歳の息子を置い...
溜まりに溜まった民衆の不満と怒りは全てこの庶子王にぶつけ...
マリー1世は神に認められたと自他共に考えていたが故の全能感...
歴代の王も不可思議な見慣れぬ犬の形をした象徴を持って神に...
しかし、庶子王ウィリアムは誇りを他者に根こそぎ奪われ、否...
庶子ウィリアムは神に望まれず誕生した子であり、神に認めら...
一方で宗教動乱と僭称者が乱立した時代のイングランド王であ...
それはあまりにも巨大な帝国が分裂するような事態を避けるが...
誰にも歓迎されていない王は孤独にあった。
だが同時に、彼は孤独ではなかった。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「ウィリアム5世治世録...
**御伽噺 [#d97d40fd]
「貴方など生まれなければ皆が幸せだったのにね」
姉上が昔言ったその台詞を僕は忘れることができない。
誰もが僕が僕であることを認めてはくれない。
ある日誰かがが囁いた。
言いたいやつには言わせておけ。
王は絶対的支配者であり、心の赴くままに民を殴りつけたとて...
お前が即位した暁には五月蝿いノイズを叩き潰して回ろうぜ、...
そんな時、僕はいつも宮廷歴史家の元に駆け込み、一冊の本を...
英国歴代君主の回顧録。
これを読むことが僕の数少ない慰めだった。
歴代君主の中でもジェームズ1世の回顧録は僕の孤独を癒してく...
マリー1世の後継者として他者に否定されながらも、英国を導き...
彼の心情が綴られたこの記録は僕を孤独から救ったのだ。
人々は僕を正統なる英国王として否定する。
けれど、この誇りある魂を受け継ぐ者…ランカスターの夢を叶え...
僕は待っていた。
自らが成人として認められる時を。
僕は見つめていた。
自らの手足となる人物を定める為に。
…僕は覚悟を決めた。
自らの手で大英帝国による平和を実現させると。
そして僕は12歳の時、あの悪魔のような平和主義者と出会った。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「ウィリアム5世回顧録...
**契約 [#xb5259cb]
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
現在の大英帝国において、君主の権限はほぼ無制限であるとい...
マグナカルタによって制限されたはずの王権はヘンリー6世がフ...
その過程で王権は神聖視され、数少ないパイを争うのが常であ...
有力貴族が富を一人で独占するにはあまりにも帝国の拡大が早...
この結果、王権神授説に疑いを挟む者は現れず、王の統治に疑...
そんな帝国に一つの疑問を生み出す存在が現れた。
…庶子王ウィリアム。
神に認められぬ結びつきにより産み落とされた赤子が王となる。
これは五賢帝最後の皇帝、フレドリック2世の浅慮が招いた事態...
前皇帝は自己の権力を絶対視する余りに自己の王権がどこに由...
私は誓って宣言するが、敬虔なカトリックの信徒である。
神の存在に疑問を挟むなどという恐れ多いことは考えたことも...
仮に王が神に選ばれた存在なのだとしても、王は神そのもので...
王は過ちを犯しうる人なのである。
これから先、王が民衆を虐げるようなことがあれば誰も止める...
大英帝国が世界を支配するのであれば、その暴走は世界の破滅...
私はその最悪の事態を防ぐ為の安全柵が必要なのではないかと...
憲法という名の規則で君主の暴走を戒める。
物言わぬデウスではなく、人類の叡智たる法の下に君主を置く...
立憲君主制を敷くことこそが大英帝国の安定に寄与するのだ。
私は今、王に会見を求めようとしている。
幼いウィリアム王の資質は知らないが、彼にとって魅力的な提...
彼は王として認められることを何より望んでいる。
よく磨かれた宮殿の廊下を音鳴らして歩く。
目の前には茶色い犬が私を見つめて立っていた。
雑種犬がこのような場所にいるべきではない。
私はその犬を蹴飛ばした。
叫び声をあげて、犬はどこかへ消え去った。
後で使用人に靴を磨かせねばなるまい。
気を取り直して私は歩を進めた。
~ ロバート・ウォルポールの述懐 ~
**拒否された皇帝 [#e0594f9e]
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1700年、民衆に蔑まされながら一人の王が即位した。
ウィリアム5世・ランカスター。
庶子王ウィリアムの治世の始まりである。
しかしこの王は即位前からうだつのあがらないジェントリ出身...
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
立憲君主制への移行。
君主から移譲された権限により議会が法治によって支配する分...
王権に枷を填めたことによる代償として貴族、聖職者の代表で...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/201995...
この一連の工作を王の右腕、ロバート・ウォルポール卿が担当...
ウォルポールが歴史の表舞台に姿を現した瞬間だった。
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
一方で皇帝ウィリアム5世は民衆の更なる不況を買う決定も行な...
スペイン、ポルトガル公爵領の併合である。
「スペイン公国に謀反の疑い有り」
「清国に技術を提供し、その支援を得てポルトガル公国と共に...
「新大陸植民地政府との連携も確認された」
当のスペイン公爵、ポルトガル公爵はあっさりと併合を受け入...
ランカスター家との婚姻を繰り返した彼らはイベリアが英国領...
英国に逆らってまで独立を成そうという意気は完全に失われて...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
&ref(http://art1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
前述の噂も立憲議会初代首相ウォルポールが適当な名分を作る...
立憲君主制を取ったものの、これらの工作は地方分権を犯すも...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
庶子王は誇りを手に入れるため民衆の歓心を買うことに必死だ...
人気取りを目論む君主が行なうことは大体決まっていた。
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
対外戦争における圧倒的な勝利……古今東西変わらぬ施政者の伝...
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**罪人 [#t3c6adef]
庶子王ウィリアムは王権に対する正統性を示す為、ウォルポー...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
名前はマリア・テレジア。
しかしながら皇后マリアは庶子の王に対する軽蔑を隠そうとも...
同様に皇帝ウィリアムは欧州王室との婚姻政策により自信の正...
仲の悪い異母姉妹は全てこの政策にかこつけて宮中の外に出し...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
皇帝は自信を理解してくれる親族を求め罪を犯した。
父王と同様、許されざる結びつきでチャールズという名の男子...
この出来事によりマリアとの夫婦仲は完全に破綻した。
以後、この夫婦の間に実子は一人として誕生していない。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**悪評 [#y4feb494]
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「かの皇帝の野心は明らかです。もはや一刻の猶予もありませ...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1709年、大英帝国によるリガ共和国への宣戦布告の報を受けて...
ヴェネチア共和国ドージェ、パオロ・レニエールは眉間に皺を...
新大陸征服を完了させた大英帝国は新大陸方面軍を解散。
そしてその軍隊を欧州に再配置し、リトアニア、ポーランド、...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
その戦力は常備軍70万、更に傭兵を各地で雇い入れて百万の...
未だに留学生制度は継続されているが、百年の不可侵条約はと...
ヴェネチアに侵略者の獰猛な牙が食い込むのは時間の問題のよ...
「決を採る。自由を捨て帝国の庇護の下に生きるか。独立を維...
委員の一人が叫んだ。
自由を与えよ。然らずんば死を!
「決は下された。我が国はリガ共和国と協力して帝国を崩壊さ...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「ヴェネチアは退廃の海にどっぷりと漬かりすぎたのです」
ウォルポールは一連のヴェネチア共和国による大英帝国内乱工...
武力では到底大英帝国に適わないと考えたリガ、ヴェネチアの...
彼等は帝国内部に工作員を送り、帝国内部で扇動したのである。
…正統なる王を玉座に。神に見放された庶子に死を!
この工作は英国諜報部に察知され、瞬く間に露見した。
こうも簡単に諜報工作が露呈したことはヴェネチアの国力停滞...
「戦という緊張感なくば、国家ですらこうも堕落するというの...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
謀略の達人である目の前の首相を見つめ、ウィリアムは溜息を...
両共和国がこのような無様な工作を始めたのも恐らくウォルポ...
首相はヴェネチア攻略を以前から皇帝に提案していたが、皇帝...
その煮え切らない態度に対し、最も皇帝の怒りを買う形で共和...
「余と共にあろうとするものはこれで誰もいなくなった」
国家の関係に友は無し。
それでも長年の盟友であったヴェネチアならば共存していける...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1711年には属国カザフスタンを経由した東アジア方面への道が...
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1717年には清国の保護を宣言し、大英帝国は手持ちのポーンを...
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**偉大なる侵略 [#jaaf06d2]
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「清国国境沿いに全兵力配備完了しました」
「よろしい。本日を持ってアスカロン作戦を開始する」
&ref(http://art1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1723年5月19日。
作戦名はアスカロン。
イングランドの守護聖人、聖ジョージが持つ巨大な竜を倒した...
この作戦を担当するのは大英帝国元帥アーサー・ウェルズリー。
皇帝リチャードは政治生命を賭けてこの作戦に臨んだと言われ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
インド、東アジアに残った全ての国を同時に征服、保護下に置...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
10年はかかると言われていたアスカロン作戦を僅か3年で終結さ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
一方で北インドの雄マールワ王国は密かに西洋の最先端軍事技...
徹底抗戦の構えを見せる。
徹底した軍事情報封鎖を強いていた大英帝国だったが、その封...
諜報担当の大臣ボーフォート公はこの失態の責を取って辞任し...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
それでもアスカロン作戦によってマールワ王国を除くアジア一...
この偉大なる侵略の成功は民衆を沸かせた。
「我は王である。唯一人の、正統なる英国皇帝である」
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
この偉大な業績を見せ付けられたことでリチャードのことを庶...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
アジアからシルクロードを通じて運ばれる香辛料、茶、陶器。
新大陸から大西洋を渡って日夜船から卸される煙草、砂糖、珈...
数々の品物がアントワープに積み下ろされていく。
富は帝国を潤し、戦争を通じて流されていく。
この経済の循環により怠惰の罪を背負った帝国民以外は下々の...
~ スミス・ハワード著 「近世のアレキサンダー、ウェリン...
**蜜月の終わり [#gfee931c]
ロバート・ウォルポール卿失脚。
1739年の年明けはこの話題が帝国で持ちきりとなった。
皇帝の寵臣と言われ、40年に近い治世を首相として支えてきた...
「もはやこの巨大な帝国は陛下一人の手に余ります。議会にお...
発端はウォルポールの忠言だった。
ラフィット好きの腹の突き出た首相は自身の夢を叶えるために...
それに対して皇帝は冷淡に言い放った。
「オーフォード伯。いや、ウォルポールよ。お前は余の首に枷...
皇帝の後ろ盾を失ったウォルポールに対して今まで虐げられて...
「余は一人でこの道を往く。ただ独り、ランカスターの夢と添...
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
もはや帝国に逆らう国はこの地表に存在しなかった。
帝国が羽を休めている時のみ世界は一時の平和を許された。
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
帝国の庇護を拒否したマールワ王国に対し、大英帝国は自身の...
1757年、72歳となった絶対君主は号令を下す。
「人の手で、神の国を成就せり」
第八話 ~孤独なる人~ 完
次回 最終話 ~Lancaster the Conqueror~ に続く。
*[[最終話 ~Lancaster the Conqueror~>AAR/女王想話/最終話...
[[詳しい解説はハートマン軍曹白熱教室 世界征服編最終回にて...
終了行:
[[AAR/女王想話]]
*第八話 ~孤独なる人~ [#h2070fbd]
**庶子王誕生 [#wbfe7988]
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202104...
五賢帝最後の皇帝、フレドリック2世にはオクタウィウスと名付...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202104...
皇太子オクタウィウスは九歳の時に病死した。
悲しみに暮れた王は宮廷に使える侍女に手を出し、一人の息子...
フレドリック2世はこの赤子を亡くなったオクタウィウスの代わ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
新たなる皇太子の名前はウィリアム。
皇帝が継嗣にローマ風の名前をつけることを改めたのは何か思...
ランカスターの血統を男児を通じて残す。
この事には何ら問題がなかった。
不満を覚えたのは大英帝国の民衆と聖職者である。
清らかな信仰を民衆と聖職者には半ば強要しているのに、自ら...
世の中に矛盾は数あれど、施政者が堂々とやるには政治面での...
それでもフレドリック2世の成した偉業を前にして人々は表立っ...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
庶子ウィリアムにとって最も不幸な出来事が起きる。
本来ならば立場の弱い庶子の皇太子に対して父が後見人として...
しかしながら1693年、その役目を放棄し、まだ8歳の息子を置い...
溜まりに溜まった民衆の不満と怒りは全てこの庶子王にぶつけ...
マリー1世は神に認められたと自他共に考えていたが故の全能感...
歴代の王も不可思議な見慣れぬ犬の形をした象徴を持って神に...
しかし、庶子王ウィリアムは誇りを他者に根こそぎ奪われ、否...
庶子ウィリアムは神に望まれず誕生した子であり、神に認めら...
一方で宗教動乱と僭称者が乱立した時代のイングランド王であ...
それはあまりにも巨大な帝国が分裂するような事態を避けるが...
誰にも歓迎されていない王は孤独にあった。
だが同時に、彼は孤独ではなかった。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「ウィリアム5世治世録...
**御伽噺 [#d97d40fd]
「貴方など生まれなければ皆が幸せだったのにね」
姉上が昔言ったその台詞を僕は忘れることができない。
誰もが僕が僕であることを認めてはくれない。
ある日誰かがが囁いた。
言いたいやつには言わせておけ。
王は絶対的支配者であり、心の赴くままに民を殴りつけたとて...
お前が即位した暁には五月蝿いノイズを叩き潰して回ろうぜ、...
そんな時、僕はいつも宮廷歴史家の元に駆け込み、一冊の本を...
英国歴代君主の回顧録。
これを読むことが僕の数少ない慰めだった。
歴代君主の中でもジェームズ1世の回顧録は僕の孤独を癒してく...
マリー1世の後継者として他者に否定されながらも、英国を導き...
彼の心情が綴られたこの記録は僕を孤独から救ったのだ。
人々は僕を正統なる英国王として否定する。
けれど、この誇りある魂を受け継ぐ者…ランカスターの夢を叶え...
僕は待っていた。
自らが成人として認められる時を。
僕は見つめていた。
自らの手足となる人物を定める為に。
…僕は覚悟を決めた。
自らの手で大英帝国による平和を実現させると。
そして僕は12歳の時、あの悪魔のような平和主義者と出会った。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「ウィリアム5世回顧録...
**契約 [#xb5259cb]
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
現在の大英帝国において、君主の権限はほぼ無制限であるとい...
マグナカルタによって制限されたはずの王権はヘンリー6世がフ...
その過程で王権は神聖視され、数少ないパイを争うのが常であ...
有力貴族が富を一人で独占するにはあまりにも帝国の拡大が早...
この結果、王権神授説に疑いを挟む者は現れず、王の統治に疑...
そんな帝国に一つの疑問を生み出す存在が現れた。
…庶子王ウィリアム。
神に認められぬ結びつきにより産み落とされた赤子が王となる。
これは五賢帝最後の皇帝、フレドリック2世の浅慮が招いた事態...
前皇帝は自己の権力を絶対視する余りに自己の王権がどこに由...
私は誓って宣言するが、敬虔なカトリックの信徒である。
神の存在に疑問を挟むなどという恐れ多いことは考えたことも...
仮に王が神に選ばれた存在なのだとしても、王は神そのもので...
王は過ちを犯しうる人なのである。
これから先、王が民衆を虐げるようなことがあれば誰も止める...
大英帝国が世界を支配するのであれば、その暴走は世界の破滅...
私はその最悪の事態を防ぐ為の安全柵が必要なのではないかと...
憲法という名の規則で君主の暴走を戒める。
物言わぬデウスではなく、人類の叡智たる法の下に君主を置く...
立憲君主制を敷くことこそが大英帝国の安定に寄与するのだ。
私は今、王に会見を求めようとしている。
幼いウィリアム王の資質は知らないが、彼にとって魅力的な提...
彼は王として認められることを何より望んでいる。
よく磨かれた宮殿の廊下を音鳴らして歩く。
目の前には茶色い犬が私を見つめて立っていた。
雑種犬がこのような場所にいるべきではない。
私はその犬を蹴飛ばした。
叫び声をあげて、犬はどこかへ消え去った。
後で使用人に靴を磨かせねばなるまい。
気を取り直して私は歩を進めた。
~ ロバート・ウォルポールの述懐 ~
**拒否された皇帝 [#e0594f9e]
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1700年、民衆に蔑まされながら一人の王が即位した。
ウィリアム5世・ランカスター。
庶子王ウィリアムの治世の始まりである。
しかしこの王は即位前からうだつのあがらないジェントリ出身...
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
立憲君主制への移行。
君主から移譲された権限により議会が法治によって支配する分...
王権に枷を填めたことによる代償として貴族、聖職者の代表で...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/201995...
この一連の工作を王の右腕、ロバート・ウォルポール卿が担当...
ウォルポールが歴史の表舞台に姿を現した瞬間だった。
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
一方で皇帝ウィリアム5世は民衆の更なる不況を買う決定も行な...
スペイン、ポルトガル公爵領の併合である。
「スペイン公国に謀反の疑い有り」
「清国に技術を提供し、その支援を得てポルトガル公国と共に...
「新大陸植民地政府との連携も確認された」
当のスペイン公爵、ポルトガル公爵はあっさりと併合を受け入...
ランカスター家との婚姻を繰り返した彼らはイベリアが英国領...
英国に逆らってまで独立を成そうという意気は完全に失われて...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
&ref(http://art1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
前述の噂も立憲議会初代首相ウォルポールが適当な名分を作る...
立憲君主制を取ったものの、これらの工作は地方分権を犯すも...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
庶子王は誇りを手に入れるため民衆の歓心を買うことに必死だ...
人気取りを目論む君主が行なうことは大体決まっていた。
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
対外戦争における圧倒的な勝利……古今東西変わらぬ施政者の伝...
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**罪人 [#t3c6adef]
庶子王ウィリアムは王権に対する正統性を示す為、ウォルポー...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
名前はマリア・テレジア。
しかしながら皇后マリアは庶子の王に対する軽蔑を隠そうとも...
同様に皇帝ウィリアムは欧州王室との婚姻政策により自信の正...
仲の悪い異母姉妹は全てこの政策にかこつけて宮中の外に出し...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
皇帝は自信を理解してくれる親族を求め罪を犯した。
父王と同様、許されざる結びつきでチャールズという名の男子...
この出来事によりマリアとの夫婦仲は完全に破綻した。
以後、この夫婦の間に実子は一人として誕生していない。
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**悪評 [#y4feb494]
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「かの皇帝の野心は明らかです。もはや一刻の猶予もありませ...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1709年、大英帝国によるリガ共和国への宣戦布告の報を受けて...
ヴェネチア共和国ドージェ、パオロ・レニエールは眉間に皺を...
新大陸征服を完了させた大英帝国は新大陸方面軍を解散。
そしてその軍隊を欧州に再配置し、リトアニア、ポーランド、...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
その戦力は常備軍70万、更に傭兵を各地で雇い入れて百万の...
未だに留学生制度は継続されているが、百年の不可侵条約はと...
ヴェネチアに侵略者の獰猛な牙が食い込むのは時間の問題のよ...
「決を採る。自由を捨て帝国の庇護の下に生きるか。独立を維...
委員の一人が叫んだ。
自由を与えよ。然らずんば死を!
「決は下された。我が国はリガ共和国と協力して帝国を崩壊さ...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「ヴェネチアは退廃の海にどっぷりと漬かりすぎたのです」
ウォルポールは一連のヴェネチア共和国による大英帝国内乱工...
武力では到底大英帝国に適わないと考えたリガ、ヴェネチアの...
彼等は帝国内部に工作員を送り、帝国内部で扇動したのである。
…正統なる王を玉座に。神に見放された庶子に死を!
この工作は英国諜報部に察知され、瞬く間に露見した。
こうも簡単に諜報工作が露呈したことはヴェネチアの国力停滞...
「戦という緊張感なくば、国家ですらこうも堕落するというの...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
謀略の達人である目の前の首相を見つめ、ウィリアムは溜息を...
両共和国がこのような無様な工作を始めたのも恐らくウォルポ...
首相はヴェネチア攻略を以前から皇帝に提案していたが、皇帝...
その煮え切らない態度に対し、最も皇帝の怒りを買う形で共和...
「余と共にあろうとするものはこれで誰もいなくなった」
国家の関係に友は無し。
それでも長年の盟友であったヴェネチアならば共存していける...
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1711年には属国カザフスタンを経由した東アジア方面への道が...
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1717年には清国の保護を宣言し、大英帝国は手持ちのポーンを...
~ 宮廷歴史家エドワード・ギボン著 「大英帝国興隆史」よ...
**偉大なる侵略 [#jaaf06d2]
&ref(http://art8.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
「清国国境沿いに全兵力配備完了しました」
「よろしい。本日を持ってアスカロン作戦を開始する」
&ref(http://art1.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
1723年5月19日。
作戦名はアスカロン。
イングランドの守護聖人、聖ジョージが持つ巨大な竜を倒した...
この作戦を担当するのは大英帝国元帥アーサー・ウェルズリー。
皇帝リチャードは政治生命を賭けてこの作戦に臨んだと言われ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
インド、東アジアに残った全ての国を同時に征服、保護下に置...
&ref(http://art6.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
10年はかかると言われていたアスカロン作戦を僅か3年で終結さ...
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
一方で北インドの雄マールワ王国は密かに西洋の最先端軍事技...
徹底抗戦の構えを見せる。
徹底した軍事情報封鎖を強いていた大英帝国だったが、その封...
諜報担当の大臣ボーフォート公はこの失態の責を取って辞任し...
&ref(http://art3.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
それでもアスカロン作戦によってマールワ王国を除くアジア一...
この偉大なる侵略の成功は民衆を沸かせた。
「我は王である。唯一人の、正統なる英国皇帝である」
&ref(http://art5.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
この偉大な業績を見せ付けられたことでリチャードのことを庶...
&ref(http://art4.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
アジアからシルクロードを通じて運ばれる香辛料、茶、陶器。
新大陸から大西洋を渡って日夜船から卸される煙草、砂糖、珈...
数々の品物がアントワープに積み下ろされていく。
富は帝国を潤し、戦争を通じて流されていく。
この経済の循環により怠惰の罪を背負った帝国民以外は下々の...
~ スミス・ハワード著 「近世のアレキサンダー、ウェリン...
**蜜月の終わり [#gfee931c]
ロバート・ウォルポール卿失脚。
1739年の年明けはこの話題が帝国で持ちきりとなった。
皇帝の寵臣と言われ、40年に近い治世を首相として支えてきた...
「もはやこの巨大な帝国は陛下一人の手に余ります。議会にお...
発端はウォルポールの忠言だった。
ラフィット好きの腹の突き出た首相は自身の夢を叶えるために...
それに対して皇帝は冷淡に言い放った。
「オーフォード伯。いや、ウォルポールよ。お前は余の首に枷...
皇帝の後ろ盾を失ったウォルポールに対して今まで虐げられて...
「余は一人でこの道を往く。ただ独り、ランカスターの夢と添...
&ref(http://art7.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
もはや帝国に逆らう国はこの地表に存在しなかった。
帝国が羽を休めている時のみ世界は一時の平和を許された。
&ref(http://art2.photozou.jp/pub/142/3068142/photo/202105...
帝国の庇護を拒否したマールワ王国に対し、大英帝国は自身の...
1757年、72歳となった絶対君主は号令を下す。
「人の手で、神の国を成就せり」
第八話 ~孤独なる人~ 完
次回 最終話 ~Lancaster the Conqueror~ に続く。
*[[最終話 ~Lancaster the Conqueror~>AAR/女王想話/最終話...
[[詳しい解説はハートマン軍曹白熱教室 世界征服編最終回にて...
ページ名: