#author("2023-03-05T04:54:18+00:00","","") #author("2023-03-05T05:01:11+00:00","","") [[AAR/近世の秋]] このAARの目的は、15世位から16世紀にかけてのブルゴーニュ公国の時代、マリエ・ド・ブルゴーニュの時代を、従来言われているような中世の終焉として描くのではなく、あらゆる意味での近代modernのはじまり、つまり近世early modernとして描こうということである。 まったく、そもそもブルゴーニュ公国という国は中世の残り香がぷんぷんする国であった。 君主の能力にもたれかかった国家の運命、傭兵頼みのナショナルアイデア、ロマンスというより政略によって得た低地諸国との婚姻同盟、優美で押しつけがましい宮廷芸術家たち、あきらかな礫岩国家。 #ref(ss02.jpg,nolink) 君主にもたれかかった国家。 #ref(ss03.jpg,nolink) 傭兵頼みのナショナルアイデア。 #ref(ss04.jpg,nolink) 政略結婚によって得た低地諸国。 #ref(ss05.jpg,nolink) 優美で押しつけがましい宮廷画家たち。 #ref(ss06.jpg,nolink) 明らかな礫岩国家。 こうした諸特徴が中世ブルゴーニュ公国の輪郭だったわけであるが、このような明らかな中世国家が近世のさきがけとなった歴史上の事実には愕然とせざるを得ない。 いったいそのようなことが、どうして可能だったのか? ある歴史家は中世から近世への飛躍は必然的なものだったとし、中世的な諸特徴には近世の萌芽が秘められていたと主張する。 またある歴史家は15世紀に即位し、半世紀以上の統治を経て16世紀に没したブルゴーニュの女公爵、マリエ・ド・ブルゴーニュの意志こそがブルゴーニュが近世国家に押し上がった理由なのだと洞察する。 だから、このAARの主題は国家としてのブルゴーニュ公国と、その領主であったマリエ・ド・ブルゴーニュの支配に置かれなければならない。 *フィリップ善良公 [#jba1ecf2] とはいえマリエの時代からブルゴーニュ公国の歴史を説き起こすことは不親切でもあろう。 世界史の事象の原因を探求するのに、あまり過去に遡ることは不適切だが、このAARの主題から言って、マリエの祖父の代、フィリップ善良公の時代から筆を起こすことは必要な処置かと思われる。 #ref(ss07.jpg,nolink) フィリップ善良公。ゲームでは5-5-5の君主点を誇る。 フィリップ善良公は中世のたわわに実った文化的全盛期の体現者といってもいい人物だった。 彼はロマンスをし、騎士道に則り、君臨して統治し、マリエのブルゴーニュ公国の基礎を築いた人物だった。 基礎を築いたというのは、フィリップ善良公は君主として5-5-5の能力値をもち、将軍として3-3-3-1の能力値を持ったゆえ、統治の上でも安全保障の上でもブルゴーニュの優位性を築いたということを意味する。 ときあたかも100年戦争の時代、フランス王位を賭けてイングランド王国とフランス王国が血塗れの死闘を繰り広げていた。 イングランドは長弓兵の優位性で戦局をはじめ優位にすすめていたが、のちフランスのジャンヌダルクとその有能な将軍及び豊富な物量によって巻き返しを食らっていた。 フィリップ善良公はその戦局の転換点に即位し、婚姻によって低地諸国を得てフランスの臣下でありながら半分独立国家のように振る舞った。 年代を経るごとに100年戦争はフランス側の優勢のうちに終わることが濃厚になっていたが、第三勢力のブルゴーニュ公国はイングランドとフランスの闘争が長引き、自分たちが漁夫の利を得ることを願うようになっていた。 #ref(ss08.jpg,nolink) 100年戦争。 フィリップ善良公の晩年は、君主点の獲得に全精力が傾けられた。 ケルン司教cologneとの同盟、ゲール公国gelreとの婚姻、ゲールとの関係改善、サヴォア公国savoyとの婚姻、スイス共和国sweitzerlandとの関係改善、ローマ教皇papal stateとの外交関係の強化、サヴォアとの関係改善、プロヴァンス公国provenceへの侮辱。 フィリップ善良公が1449年の死去までに達成したこれらのミッションの羅列は、威信と君主点の報酬にどれだけ善良公が心を砕いていたかがわかる重要な要素である。 1449年4月にミッションはひと段落し、ブルゴーニュ公国は「バーbarroisのブルゴーニュ住民を保護せよ」というミッションを引き当てる。 #ref(ss09.jpg,nolink) バー州における私たちの兄弟は、残酷な圧政下にある。彼らをあるべき立場に戻すのが、私たちの義務である。 フィリップ善良公はこのミッションを引き当ててすぐ、病のため逝去した。 #ref(ss10.jpg,nolink) 次章へ続く。