AAR/士気も規律もガレーも大型船も初心者も関係ないポルトガル

 

概要

このページはAARのおまけとして、陸戦思想宗教アイデアについて解説します。
私ごときが大規模な解説を行うなどおこがましい話です。温かい目で見てくだされば幸い。

いろいろな誤解を避けるために結構な長文になってますので、必要なとこだけ切り抜いて読む形が良さそうです。

 

宗教評価・解説(20/09/09作成)

大前提として、DLCをすべて導入済とします。

●グローバル宗教とローカル宗教

宗教の評価はアイデアの評価以上に難しいものとなります。
その大きな要因は、プレイ国家・プレイ方針による価値の変化が、そもそも、その宗教を採用(国教化)できるか?という点にまで及ぶためです。

例としてアングリカン、これはイングランドなら簡単に採用できますが、他の国で採用するにはブリテンを攻略するのが必須となります。
中南米宗教は極めて強力ですが、非中南米の国が採用するには特殊なアプローチが必要となります。

ここでは大まかな区分として、どんな国でも採用しやすい宗教をグローバル宗教、一部の国しか採用しがたい宗教をローカル宗教とし、分けて評価することとします。

●改宗の無視

宗教を評価する際、宣教師の数布教強度既存州の宗教、つまり国教の州をどれだけ持ちやすいかという点が注目されることが多いです。
しかし、この私による評価では、あえて改宗を無視することとします。

第一に、私のプレイスタイルが改宗作業そのもので利益を得られる場合*1を除けば、積極的に改宗せず人文系で対応するアプローチを主とすること。
第二に、改宗まで織り込んで評価しようとすると、ただでさえ多い評価の軸が更に増して、収拾を付けるのが難しくなるからです。

●グローバル宗教

グローバル宗教は、どんな国でも採用しやすいがために、どんなプレイ方針にも対応しています。
ここではアイデア評価と同じく、いくつかのプレイ方針ごと、状況を()内で記述し分割して評価します。

カトリック

S(拡大・欧州内先行)
A(拡大・欧州外先行)
D(非拡大)

戦闘面の効果が無い影響で低く見積もられがちですが、Emperorでの強化もあり状況次第では最上級です。

とにもかくにも教皇影響度(教皇ポイント)を稼ぎまくり・使いまくりが軸となります。
教皇ポイントは、欧州内の拡大で枢機卿を抑える、州を改宗する、教皇領国家との友好を保つことで稼げます。
「安定度+1」のアクションで安定度3を保つのが最も優秀で、「外交評判+1」「MP回復+20%」が続きます。

アクション以上に重要なのは、教皇の御者になることです。御者になれるかは運も絡みますが、他のカトリック国家を滅ぼし尽くすことで独占しやすくなります。
御者は「技術コスト-5%」「顧問コスト-20%」などの堅実に優秀な効果に加え「AE-20%」という稀有かつ強力な効果が貰えます。
序盤から中盤にかけ運も味方して御者になれると、無理な拡大を行っても包囲網を組まれなくなります。
また、御者が用いることのできる「破門」は、破門対象に使えるCBがAE半減という極悪っぷり。御者そのものでもAEが削減されるだけに、えげつないシナジー。
ver1.30.3時点では破門CBが不発に終わるバグがあるものの、アップデートで修正される見通しなので、思う存分に暴れられます。

御者に付属する要素の「金印勅書」はどれも強力ですが、「開発コスト-5%」「異教寛容+2」をセットで貰えるのが最も使い勝手良し。
「トリエント公会議」による追加効果は制御が難しいものの、欧州内での拡大に寄与するため注視しておきたいです。

もっぱらAE管理の難しい欧州での拡大に適した宗教と言えます。ただし、御者になれないと弱いので注意。もっとも運に左右される宗教と言えます。

欧州外の国、つまり初期からカトリックでない国がわざわざ改宗するメリットは薄そうに見えますが、改宗のゴリ押しでポイントを稼いで御者になれるならアリかも?
また、カトリックのAI信仰の守護者の邪魔が入らないのも良いです。借金無視して出張ってくるスペイン等の相手が面倒なときこそ、カトリックが輝きます。

弱点は反乱耐性の低さ。
「異端寛容-1」という全宗教中唯一の負の寛容効果を持ち、金印勅書以外に反乱抑制に寄与するものがありません。
また、教皇ポイントを稼ぐために改宗作業を行うのも反乱を誘引します。改宗さえしてしまえば「国教寛容+1」が光るのですが、途中で反乱が起きる時点で無意味な感。

プロテスタント

B

THE 器用貧乏。
固定で貰える「関係改善+15%」は嬉しいですし、三種類選べるアスペクトも使い勝手は悪くないのですが、
いかんせん尖ったものがなく、どんなプレイ方針でも物足りない感に苛まれます。

HRE内の小国を代表として、AEに制約されるが御者になるほどの教皇ポイントが稼げない場合に、関係改善を頼みにするため改宗する程度でしょうか。

改革派

D

紛れもなくキリスト教内で最弱。
固定で貰える「異端寛容+2」は悪くないのですが、他の手段でも異端寛容を稼げるため優先度が下がっています。
三種類のボーナスを同時に貰えるなら強かったのですが、現実的には二種類以上の同時使用は厳しいです。

正教

S(大国)
A(小国)

最強宗教の呼び声が高く、その長所については改めて解説するまでもないので、唯一の弱点だけ記しておきます。

カトリックから正教に改宗するにしろ、イスラムから正教に改宗するにしろ、外交的孤立を招きやすいです。
同盟のアテにできる正教国はモスクワ→ロシアしか存在しませんが、いかんせん貧乏ゆえ参戦不発が多い辛さ。
必然的に異端・異教の同盟国を探す必要に迫られますが、自国が小さいほど同盟判定が渋くなって苦労します。

なお、総主教の権威は特権で年+1.2、高頻度でイベントから+5を貰えるので、イコンは常時使えるものと考えて良いでしょう。
むしろ期限切れの前であっても、必要に応じてガンガン入れ替えていくべし。

コプト

A(レヴァント開始・WC)
C(レヴァント開始・拡大)
D(レヴァント開始・非拡大)
D(非レヴァント開始)

オスマンWCのお供で有名。とにもかくにも「コア化-10%」がWCで効きます。
他の効果はさほどのものではなく、その効果を得ていくためのハードル(=オスマンやマムルークを打倒)も高いため、事実上のコア化全振り宗教でしょう。

問題は同じく「コア化-10%」を持つヒンドゥーの存在であり、改宗先としては劣っているのが否めません。
オスマンのように、ヒンドゥー改宗よりコプト改宗が手軽な場合にのみ選択肢に入るでしょう。

スンニ

A(小国)
B(大国)

イスラムの三宗派の中で、スンニの固有効果は「騎兵割合+10%」と無視できるレベルなので、ここではイスラムの共通機能を元に評価を行います。

統治者が変わるごとに押し直すディシジョンの効果に強力なものが多いですが、ディシジョンを使用できるか否かが統治者の能力に基づいています。
よって、高い能力の統治者を戴いてこそ本領を発揮できると言えます。
ここで効いてくるのが「後継者誕生率+100%」、廃嫡ガチャを連打しやすく、安定的に高い能力を確保しやすいのです。

Pietyは高低どちらも強力ですが、普通にプレイしていると低Pietyを維持するのは困難です。
低Pietyで改宗強度が上がるのに、改宗が完了するとPietyが増加するのが絶望的に噛み合っていません。
低Pietyは諦めて、技術更新時にPiety最大の「技術コスト-10%」を貰うこと、Pietyが溢れそうなら貨幣改鋳で小銭稼ぎすることを意識するのが良いでしょう。

学派は「AE-10%」のハンバリ派が著しく優秀。自国がハンバリ派でないとき、ADM50を消費して招聘する価値があります。
確実にハンバリ派を招聘するために、招聘先の国を属国としてキープしておくのも良いでしょう。

正教とは対照的に、スンニの優秀な同盟国(西はモロッコから東はマラッカまで)が多く、外交上では最も優れています。

シーア

B

スンニとは異なり「士気+5%」が貰え、学派で「白兵ダメージ」のボーナスを貰える脳筋マン。序盤の陸戦で差を付けられます。
他には、同盟国の管理が難しい代わりに聖戦CBを使いやすいだけ・・・ではなく、隠れた凄い効果としてイスマーイール派の「共和伝統+0.5/年」があります。
宗教で稼げる共和伝統の値としてはダントツで高く、高能力君主の安定供給に貢献すること間違いなしです。

問題は、初期状態でシーア共和制の国は無い上に他政体から共和制への変更は困難であり、共和制スタートの国がシーアを採用することでぐらいしか効果を活かせないことです。

なお、スンニでもイスマーイール派を招聘できなくはないのですが、招聘条件がPiety-50以下であるために使い勝手が悪くなっています。

上座部仏教

D

内陸にしか存在しない大乗仏教・密教とは異なり、セイロン島と東南アジア沿岸に広く分布するおかげで、仏教随一のグローバル宗教への分類。

固有効果は「異端寛容+2」「顧問コスト-10%」という、デジャヴ改革派で、はっきり言って弱いです。
''カルマ'でコンスタントに中庸ボーナスの「外交評判+2」「規律+5%」を拾えるなら悪くないですが、中盤以降は得てして低カルマとなって「規律+2.5%」しか貰えなくなってしまいます。

初期から上座部の国なら国教変更までの間は維持されるという点で、ガチで採用頻度が無い改革派よりはマシかもしれません。

ヒンドゥー

S(WC)
B(拡大)
C(非拡大)

カザンWCのお供としても利用しました。シヴァ神から貰える「コア化-10%」「AE-5%」が本体ですが、
固定で貰える「国教寛容+1」「異教寛容+1」の使い勝手も良いです。というのも、ヒンドゥーの異端はシクだけであり、実質的には全プロビで「寛容+1」を貰えるようなものだからです。

特権を活用することで柔軟に主神を切り替えられるので、
ワンポイントで「建設コスト-10%」使ったり、足が止まっているときに「関係改善+20%」を入れたりと、正教ほどでないにせよ総合的な強さもあります。

呪物崇拝

B(呪物崇拝開始)
C(非呪物崇拝開始)

固定で「異教寛容+2」「外交評判+1」が貰える点が著しく優秀。どちらも腐らず役立ちます。
カルトの効果は「戦争疲弊-0.05/月」「不穏度-2」「関係改善+20%」あたりが有力。

信仰の守護者が使えない非キリスト・イスラムの中では、宗教によって戦争疲弊を下げられるのはこれとナワトルだけ。
「不穏度-2」は最上級の反乱抑制効果で「異教寛容+2」と合わせて全宗教中トップの反乱抑制能力に至ります。
「関係改善+20%」はプロテスタントの「関係改善+15%」に優越しており、AEがボトルネックとなっている環境で貢献します。

わざわざ国教を変える気にはならないですが、呪物崇拝で始まるならそのまま通しで使うのは悪くないと思ってます。なによりアフリカから正教は遠いですから。

●ローカル宗教

ローカル宗教は、それを採用することのできる国が限定されがちです。
ここでもアイデア評価と同じく、いくつかのプレイ方針ごと、状況を()内で記述し分割して評価しますが、よりローカルでニッチな区分を採用します。

アングリカン

A(ブリテン・植民海洋帝国)
C(ブリテン・欧州大陸拡大)

私のこのAARを読んでもらうのが早いですが、改めて重要事項を解説。
とにもかくにも収入を1.125倍する絶大な資金力ありき。資金力のゴリ押しはどんな状況でも強いですが、特に植民プレイとマッチしています。

カトリック以上に簡単に安定度+3を維持できる点、迅速に革新性カンストを達成できる点も優秀ですが、欧州で本格的に戦争するのとは相性が良くありません。
でもブリテンだったら、わざわざプロテスタント・改革派に改宗するより、(聖戦CBの使い勝手も含め)アングリカンのほうが使いやすいんじゃないでしょうか。

フス派

B(ボヘミア)

プロテスタントと同様のアスペクトシステムを用いるものの、無難な効果が多いプロテスタントと異なり、奇抜な効果が揃ってます。
強力なのは「関係改善+30%」。これを採用中は宣戦布告できないに等しいのが問題ですが、そこはアスペクト故に切り替えで調整しやすいです。

ピンポイントで使える効果が大部分ですが、恒常的に使えるものとしては「人的資源+20%」と「国教寛容+1」「交易品生産+5%」の二つがあります。
この二つを入れながら、最後の一つをピンポイント枠としてガンガン入れ替えていくのが王道になると思います。

総合的に言って、プロテスタントを上回る一方で、正教には大幅に劣っているとまとめられます。
ボヘミアのスタート位置なら、すぐに正教になれちゃうがために不遇です。

イバード

B(オマーン等)

「士気+5%」の代わりに「交易品生産+10%」を貰い、外交の自由度が更に下がったシーアだと思えば良いでしょう。
「交易品生産+10%」も十分に強い効果なので、シーアとの差がさほど大きいとは思えません。

スンニ・シーアに対応するどちらの学派も自由に招聘できるという長所もあります。
わざわざイバードの国でプレイするなら、最寄りのスンニ・シーアに乗り換えることはせず、このまま通したいものですね。

大乗仏教

C

ベトナム北部とフィリピン一島だけという、仏教系の中で最も小さい宗派。
されども「アイデアコスト-5%」が貰えるために、仏教系の中では最も使い勝手が良いでしょう。

しかし、いかんせん仏教そのものが弱くて残念。

密教

A(アジア神権狙い)
C

けっこう広く分布している(ようにプロヴィンスのデカさで錯覚する)やつ。
仏教系の中で唯一「異端寛容」が「+2」ではなく「+1」に抑えられており、儒教エリアに伸びるときなどにわずかに損する気がします。
固有効果は「士気+5%」、序盤にわずかに優越できますが、さっさとヒンドゥーかイスラムに改宗したくなります。

アジアの国で早期に神権を採用したい場合、国教が密教+必要プロヴィンスの保有でチベットに変態、するとダライ・ラマの登場イベントで神権になれます。
神権を採用した後なら密教を捨ててもあまり*2差し支えないです。

儒教

B(明)
C(朝鮮)

調和ボーナスによって少しずつ強化されるのが特色です。
一通りの調和を終えればそこそこ強いですが、いかんせん強化が遅いのが難点。

明の場合、その国土の大きさに加え、反乱軍によって荒廃が広がることも好ましくないため、儒教のままで居ることが有力になるでしょう。

朝鮮の場合、さっさと日本を攻略して神道になったほうが明らかに強いと思います。しかしそんなヘイトな真似を許しても良いのでしょうか?

神道

A(朝鮮)
B(日本)
C(琉球)

「士気+10%」が固定で貰えるのが優秀です。
「孤立主義」に関わる大量のイベントが発生し、その結果として様々な強力な効果がもたらされます。
これらを管理するのは大変ですが、うまく使えれば強力なので、英wiki等で下調べしておくと良いでしょう。

日本は海外進出をしがちなプレイ方針もあって、必ずしも神道に拘る必要はありません。ロシアがシベリアに来るのを待って正教を貰いに行くのも有り得るかも。
神道が最もマッチしているのは、明と殴り合いたい朝鮮でしょう。「士気+10%」でヘナチョコ儒者を殴り倒してやりましょう。

むしろ琉球については、神道以外にも選択肢が多すぎて採用頻度が減っているのが明らかですね。

シク教

C(パンジャーブ)

「士気+10&」が固定で貰えるのは優秀ですが、年次で変化する効果がイマイチ使いにくいです。
「規律+5%」を貰える時期が二回に分けて合計50年程度あり、その時期に限定すれば最強の陸軍を作れますが、意味があるかと言われると・・・。

パンジャーブを形成する前提条件なので、そのためのプレイ専用の宗教と言えます。
パンジャーブのNIは「士気+10%」と「規律+5%」が揃っているので、インド屈指の軍質を楽しめます。

テングリ

S(騎兵プレイ)
B(その他)

独特な「二次宗教」システムを持ち、その上澄みの効果を見る分には正教のイコンに迫っています。
神道で「規律+5%」「不穏度-1」、プロテで「アイデア-10%」、上座部で「開発コスト-10%」「外交官+1」、ヒンドゥーで「異教寛容+2」「異端寛容+1」あたりが強力。
このあたりを10年ごとに切り替えていけると思えば、普通に優秀な部類の宗教と言えるのでは。

外交の自由度が高いのも魅力。
仲良くしたい国の宗教に合わせる独特なプレイができます。

また二次宗教なしの状態だと「騎兵比率+25%」の効果があり、遊牧民政府の「騎兵比率+25%」と合わせることで、夢の騎兵100%編成を実現できる数少ない方法となっています。

アニミズム

論外

論外一号。DLCでテコ入れがされる日が来ることはなさそうです。
しかしアニミズムのままで居ることを要求する実績があるあたり、パラドの性格の悪さがよく分かりますね。

トーテミズム

論外

論外二号。
効果はアニミズムと同じですが、トーテミズムのままで居ることを要求する実績が無いため、悪印象は薄いです。

ユダヤ

D

趣味枠一号。
対応する実績も無く、ベテランプレイヤーでもユダヤでプレイしたことがない人が多いと思われます。

ゾロアスター

D

趣味枠二号。
ディシジョンで貰える効果の関係でユダヤよりは強いですし、対応する実績もあります。

●中南米宗教

グローバルとローカルに分けると言いましたが、以下の三つは特殊すぎるので別基準で評価させてください。

インティ

B

中南米宗教三兄弟の南米部門。
改革こそ楽ですが、三兄弟の中で最弱ですね。

マヤ

S

中南米宗教三兄弟の預言部門。
とにもかくにも「コア化-20%」が優秀すぎます。
paganスタートの国であれば、マヤまでやってきて預言を授かるのも辞さない。

問題は、改革を進める際に生じるプロヴィンスへの処理です。
単にコアを失うだけのとき、国家に独立されるとき、その前提条件の違いが分かりません。
誰か教えてください!!!

ナワトル

A

中南米宗教三兄弟の生贄部門。
改革前から「士気+10%」を持ち、改革で「規律+5%」と「戦争疲弊-0.05/月」を得て暴れるヤベーやつ。
改革は一番大変ですが、プレイしている分には楽しいですね。

 

消極的陸戦論(20/09/06作成)

長文注意
EU4における最適解というものは、もしあるとしてもプレイヤー個人の環境によって大きく異なることを最初に強調しておきます。

概要

以前のAARの中でも書いたのですが、陸戦を行うのが好ましい状況は限定されるというのが私の思想です。
原則は陸戦ほぼなしで戦争に勝利することを目指すべきと考えます。
つまるところ、CB対象・敵首都・各地の要塞を迅速に攻略して戦勝点を稼ぐことを最優先とします。

自軍の物量が敵軍より上回っているとき、原則としてAI陸軍はガン逃げモードに入るため、わざわざ追いかけなければ陸戦は発生しません。
この場合、AI陸軍の行動を制約して自国領の占領を妨害したり、AI陸軍に占領された自国領を速やかに奪還したりしながら、敵の要塞を一通り落とせば100点和平も遠くありません。

逆に自軍の物量が敵軍を下回っているとき、そもそもこのような状態での戦争は避けるべきですが、やむを得ない状況もあるでしょう。
原則としてAI陸軍は陸軍の少ない方向に進軍していくため、無人の自国領を囮にしたり、同盟国に敵軍を押し付けたりしながら、いわゆる占領合戦に勝つことを目指すのです。

陸軍の質の意味

陸戦をさほど行わないなら、陸軍の質を高める必要性は低くなります。
そもそも、陸軍の質が貢献するのはどのような場面であるか、そこをまず整理しておきましょう。

1.陸戦そのものを戦争の勝利に繋げる

敵全軍を殲滅&敵全土を占領の状態で「完膚なき敗戦」の効果を相手に与えることで、戦争開始直後であっても100点和平*3を通すことができます。
小国を速やかに滅ぼしたい*4ときは、敵全軍を殲滅したいものです。

あるいは、遊牧民における平原戦や、山岳要塞や海峡でのトラップ防衛戦で、敵軍の殲滅を続ける → 敵のMPと資金を枯渇させるアプローチに出るときです。
これは砲兵も解禁されてないような序盤に有効で、特に中小国スタートで有力な選択肢となります。

なお、聖戦CBのような陸戦勝利が戦勝点に直結するものを利用してるときでも、CB達成を優先せず要塞占領で戦勝点を稼ぐのが私のスタイルです。

2.陸戦における自軍の損害を減らす

どんなに注意しようが、視界外からの敵軍の突貫などで不意に陸戦が勃発してしまうことがあります。
そんなときにMPの損害を減らす、または自軍が殲滅されモチベが急落するのを避けるに越したことはないです。

とはいえ、そもそもの軍量があればAIをビビらせて突貫リスクを減らせますし、ダメージを受けたとしてもリカバリできますから、
これについても質より量が寄与する可能性があることは示しておかなければなりません。

3.陸戦でAI軍を殲滅して気持ちよくなる

プレイヤー厭戦の観点から言えば、逃げ回って塗り絵を仕掛けてくるAI陸軍を初手で始末しておくのは合理的です。
自国が大国になるほど注視しなければならない部分が増えるため、殲滅の魅力が上がっていきます。

ただし、(戦闘幅を満たしていない)敵軍に対し、10倍の数をぶつけることで、質に関係なく自軍の損害ゼロで一瞬の殲滅が可能です。
敵が分散したときはこの条件を満たすのがさほど難しくないため、これまた質より量によって達成できることがあります。

本当に質を求めている場合だろうか?

陸軍伝統は高いに越したことはないですし、将軍は強いに越したことがないですし、規律・士気の顧問の使い所はありますし、NIの陸軍強化は悪くありません。
ただしこれらの要素は、他の要素との間で(さして)トレードオフの関係にはありません。

「トレードオフ」や「機会費用」という経済学上の概念は、パラドゲーをプレイする上でも役立ちます。
その解説としてはこちらが分かりやすいです。

さて、軍事系アイデアでアイデア枠を圧迫することは、紛れもなく他のアイデアとのトレードオフの関係を生じさせます。

国土拡大の根幹となる統治・権勢、裏口拡大の根幹となる探検・拡張、AE抑制の諜報・宗教、国力上げの経済・交易、ストレスフリーの人文、ほのぼのの外交、物好きの海運と欲しいアイデアは多岐に渡ります。
特に序盤のアイデア選択は国家の方向性を大きく決定しますが、果たしてここで陸軍の質を高めるアイデアを取っている余裕があるでしょうか?

アイデアで質を高めることによる利得は存在します。存在しますが、それを選ぶことは他の利得を失っているという意味でもあるのです。

「純」軍事アイデアは少ない

ここで注意すべきは、軍事アイデア=陸軍の質の強化という性質とは限らないということです。
アイデアについて詳しくは別項目で取り上げますが、純然たる質系のポリシーは軍質ぐらいのもので、
言わずもがな非質系の軍量、質も高めるがそれ以外が極めて強い攻勢、そもそも内政系の貴族・富豪、パラドに嫌われてる防勢と、*5

よって、質以外の利得を求めることを重んじて軍事アイデアを取るという状況も大いに考えられます。
たとえば攻勢は「規律はなくても良いけど他が欲しいから取る」という選択肢もあるわけです。

とはいえ、軍質以外の利得で統治・外交アイデアに並びうるのは、軍量と攻勢ぐらいのものでしょう。
それ以外は良く言って趣味の領域、悪く言って存在感なしという印象を抱かざるを得ない。
もし純軍事アイデアを取るとしても、プレイヤー厭戦の管理だけを目的としただいたい六番目以降のアイデアですね。

総括

「質以外の方法でどうにかしよう」というアプローチが私の基本戦略です。

この考えは必ずしも私に固有のものではなく、数ある先人の方々に採用されているものです。
WC常連の人は、序盤のアイデアがほとんど非軍事で統一されてます。終盤になって攻勢or軍質を取っている程度です。
1531オイラトの人は、これまでの日本語AARの作中で一度も軍事アイデアを採用した形跡がありません。
ほのぼのの人は「城壁破壊にMILを使うせいで軍事技術が遅れる」という迫真のスタイル。さすがに私は恐ろしくて軍事技術は上げてます。

 

旧版アイデア解説(19年8月作成)

2019年の8月、つまり一年前に書いた身内用のアイデア論評を載せておきます。
1.29時代の古いものであり、今とは変わってる点も多いですが、話の叩き台には使えるかと。
防勢の解説内容がやたらタイムリーでびっくりしました。一年前のわたしは預言者だった・・・?

五段階評価で、~が付いてるのはプレイ方針によって価値が変動するものです。

 

経済☆☆☆☆☆~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
DEVポチのコストが下がるのが長期的に君主点の節約になる。金回りが劇的に楽になるためどんなプレイでも強い。
拡張プレイでは他のADM系アイデアの価値も高まる都合、相対的に非拡張プレイほど経済を使いやすくなるが、よほど金回りが安泰でない限りは早期に取りたい。
ポリシーは陸軍・内政の両面で強い。
宗教☆☆~☆☆☆☆
本体は七番目の聖戦CB、異教・異端に隣接するだけで即使用可のお手軽、DIP消費なしで領土切り取り放題な上、AEを75%に抑えるため包囲網の対策になる。
他の改宗関係の効果も強力で異教・異端プロビを抱えがちな拡張プレイに対応している。ポリシーも陸軍絡みで強力なものが多い。
人文とNIの組み合わせで異教・異端寛容度を高くできるならまったく改宗しない戦略が現実味を帯びてくるため、その場合は拡張プレイでも不要となる。
人文☆~☆☆☆☆
拡張プレイに必須。これを取らないで拡張すると反乱に延々と付き合うハメになる。攻勢とのポリシーを使うと反乱完封も見えてくる。
地味に関係改善の効果を高めるため、包囲網対策にも有効。あまり拡張しない場合、宗教以上統治未満の水準で不要となる。
統治☆~☆☆☆☆
拡張プレイに必須。本体は二番目のコア化コスト-25%でADMを大節約でき、「コア化時間」も-25%してくれるのが大きい。
OEの発生期間を短くしてくれるので、汚職などのペナを抑えたり急速に拡大するのに役立つ。他の効果はショボいため、拡張しないならまったく不要。
革新☆~☆☆☆
貴重な戦争疲弊低下が六番目にあり、信仰の守護者やポリシーで対応できない場合に欲しくなる。他の効果は特化した強さは無いが全体の底上げに繋がる。
拡張☆~☆☆
貴重なADM系アイデアの枠をここに注ぎ込んで良いのだろうか。
植民者が二人増えるのが本体だが探検の一人をこき使って並行植民すれば事足りる場合が多い。
戦争で拡張しないプレイを徹底するなら、他のADM系アイデイアの価値が下がるので辛うじて選択肢に入る。
探検とのシナジーで植民の進展は高速になるが、そこまで自前で植民せずとも、植民地国家に任せたり原住国家を滅ぼしたり他国の植民地を奪えば済むのでは。
交易☆☆☆☆~☆☆☆☆☆
癖の強いDIPアイデアの中では珍しく安定感のある性能。
植民地国家・貿易会社から商人を得にくい地域なら早期に欲しいし、既に十分な商人が居るときでも交易収入を確実に引き上げる効果がある。
ポリシーも内政に寄与するものが多く、枠が空いたら気楽に入れられる。
外交☆☆~☆☆☆☆
実は拡張プレイ用のアイデアであり、一回の講話で多くの領土を切り取る効果が本体となる。
帝国主義CBと合わせて大国を殴ると、OE200%近くまで領土を切り取るのも夢ではない。
外交官二名と関係改善プラスの効果で、包囲網対策にも堅実な効果。婚姻を切ることによるデメリットが無くなるのもときどき役に立つ。
諜報☆~☆☆☆☆
AE抑制ガン特化アイデア。直球でAEを下げる唯一無二の効果を筆頭に、クレーム付けまくりで領土獲得時のAEを抑え、追加される外交官をこき使う。
HRE内ではAEの溜まり方がえげつないため有力な選択肢になってくる。AE関係以外の効果はカスであり、極端なAE対策を必要としなければ取る価値はない。
海運☆~☆☆
扶養限界増加や維持費削減など効果が軍量に近く、質の面での効果は無いに等しい。
大量の小型船で交易シェアを握ったり、大型船の物量でAIを寄せ付けたくないときに選択肢に入ってくる。
海運コンプ+特定ノードのシェア確保で、商人が貰えるミッションも地味に嬉しい。
探検☆~☆☆☆☆☆
現行の環境では植民地国家・貿易会社から得られる利得が極めて大きいため、これらに早期にアクセスできる地域であればとてつもなく強力な効果を発揮する。
逆に言えば、早期にアクセスできなかったり、首都大陸制限でそもそも利用できなかったりすると途端に死んでしまう。
ゲーム中盤からは、植民地は育てるものから奪うものに変わっていくのだ。
権勢☆~☆☆☆☆☆
「属国を利用した拡張プレイ」のためだけにある玄人向けのアイデア。
「noCBでティムール属国してコア回収」という言葉の意味が分かって、実行する覚悟がある人のために存在する。
当然、統治とのポリシーで外交併合コストを下げるのも必須。
通常CBで領土要求等をする際のDIPの消費を抑えたり外交官の移動時間を短縮したりと、属国の存在に関係なく役立つ効果もないことはない。
軍量☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いちいち効果を説明するようなものでもなく、取らない選択肢は無い。問題は「いつ」取るかだけ。
AIはマンパワーを見て包囲網参加を判断しているため、事実上として最強の包囲網対策でもある。
攻勢☆☆☆☆☆
質の面では最強級の軍事アイデアで、早期に取りたいものの一つ。
どちらかと言えばアイデア後半に強力なものが多く、場合によっては軍事技術を遅らせることすら選択肢に入る。
野戦を回避するプレイスタイルであっても、扶養限界と包囲速度に寄与するために有用となる。
軍質☆☆☆☆~☆☆☆☆☆
攻勢に劣るのは効果が海軍にも振り分けられているからだ。
それでも強力なのは間違いなく、ポリシーについてはむしろ陸軍にガッツリ入り、攻勢を上回りうる。
防勢☆☆☆
二番目で士気が+15されるのは特筆すべきもので、最初のアイデアとして選択すれば疑似エランができる。
しかし、エランがエランたる所以はフランスの国力にあるのだから、小国が取ったところでどうこうなるものではない。
よほどの狙いがなければ、初手防勢からの戦争は有効な手段となり得ないだろう。
貴族☆☆☆~☆☆☆☆
指揮官枠が増え指揮官包囲に+1されるため、大国間の戦争で貢献度が大きい。
NI・ポリシーも合わせると騎兵の戦闘力が凄いことになるので、騎兵による野戦で蹂躙&大量の砲兵による要塞即落ちと言えば強そうだが、
やたら金がかかる関係、歩兵の数で押し潰したほうが面倒が少ないのも事実。
富豪☆☆~☆☆☆
飛び抜けた効果は無いが戦争・内政の両面にバランス良く効果を発揮する。
しかし、たいていの国家では貴族に枠を奪われてしまうため採用すらできない。
富豪を取るためだけに既存の政治体制を切り替える価値は無いだろう。ちなみに頑張れば貴族との両取りすら可能ではあるが、やはり利益があるとは言い難い。
海軍
これ要る?海軍の量ではなく質を伸ばすのだが、質を伸ばして利益がある場面は限定される。
軍質や海運で海軍力をケアできることも踏まえ、ガチで存在意義が分からない。なによりMILアイデアの枠を食うことが致命傷。

*1 教皇ポイントを稼げるカトリック、国教州の人的資源と不穏度ボーナスの正教のみ積極的に改宗します。
*2 チベットのミッションツリーの一部を進められなくなるので、先に達成しておくと良いでしょう。
*3 通常、戦争開始直後だと「戦争の期間」との兼ね合いで100点和平が難しい。
*4 相手国の滅亡・属国化を強いる和平条件にはネガティブな修正が加わるため、このときも「完膚なき敗戦」を目指すと迅速。
*5 軍事系アイデアは全部で6つだったと思うので、これで足りてますね。

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