AAR/米 沢 幕 府 !
第2話 世界征服 に戻る

……

 
 
 
 

264388173_org.jpg「ブラーヴォ!(素晴らしい)」

 
 
 
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パチパチパチ……!

……。

海外勢の激烈だが、泡のようにはじけては消えていく拍手……。

 

場内を支配するのは

 

不平不満の音……殺気!

 
 

「なにこれ…」
「このおかしな芝居はなに?」
「南蛮に媚びへつらうとは・・・御乱心召されたか⁉︎」

 
 
 

257632358_org.jpg 「殿……場内がいまにも燃えそうです!」

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257632381_org.jpgムッ
257632372_org.jpg  スペイン万歳! 万歳! バンザーイ! パチパチパチ

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257632381_org.jpg (……とにかく笑っとけ)

257632358_org.jpg 「……」
257632353_org.jpg パチパチパチ

 
 
 
 
 

 
 
 
 

257632358_org.jpg 「――客を出し終えました」
257632358_org.jpg 「本当にこんな芝居やってよかったのですか?」

257632381_org.jpg「ああ」

257632381_org.jpg「いいんだ……」

 

257875302_org.jpg (今は――)

 

dcqYsaD.jpg (これで――)

 

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一冊の本

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あゆみ

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『フロイス日本史』によれば織田信長は、こう宣言したという。
「毛利を倒して日本を統一したら、一大艦隊を編成し、シナを征服する」

現在は衰退の兆しがあるものの、かつては
「一国で全欧州の商取引に匹敵する」
とまで謳われた超大国への挑戦状である。

小さな島国の「王」が見るには、大きすぎる夢ではなかったか?
激しい気性がなせる、一過性の大言壮語であったのか?

否!

結論から言うと当時の日本は強かった。

織田家に限っても、20万に届かんとする兵力と
その3割に火器を装備させるだけの経済力を有した、と資料は語る。

燎原の火のように燃え広がる野心を抱き
それを可能にする実力を持つ「信長日本」にとって
明との決戦は、避けがたい未来の一幕であり——

日本は一方の軍事帝国として世界の覇権レースに乱入する——

はずであったのだ……

 
 
 

日没

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貪欲な残虐者と言わねばならない。確かに秀吉は人を殺しすぎた。
敵も味方の肉親も。そして罪のない我が子まで!
(『全能なる欧州 第4集』より)

しかし、豊臣秀吉の凄惨極まる統一事業が、まず大和民族を激減させ
それに——終わりなき内戦——『第二次 応仁の乱』が折り重なり、「軍事帝国」は露と消えた。

暗黒から細腕を外海に伸ばした西欧は、沈まない太陽をつかんでみせたが
燦然と輝く『日出ずる処』は、闇の淵へと堕ちていった。

信長の野望をそのまま引き継いだ秀吉は
幾度となく明征服への想いをめぐらせるが
自らが招いた惨状を前に諦めざるを得なかった。

閉海

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豊臣信廉一世とウィリアム・アダムス

多くの識者が指摘するように、豊臣幕府を死の床へと誘った第一級の要因は、
商教一体を押し通す、カトリックへの公然たる憎悪にあったのは間違いない。

その好機を突き外交顧問枠(オープンスペース)へ忍び寄ったのが、
英蘭勢、つまり布教をせず商売しか求めない紅毛人(プロテスタント)である。

秀吉の後継者たる両信廉は、ウィリアム・アダムス、ヤン・ヨーステンらを重用し、その大法螺話(ポジショントーク)
(例えばあのスペイン帝国が、英国艦隊に大敗して凋落した……など荒唐無稽な話……!)
にのせられ、切支丹を根絶やし、愚かにも先端をひた走るイベリア勢との国交を絶つに至る。

新教国には、アジアに確固たる地歩などありはしない。
したがって、円滑な情報の伝達手段など無く
持ち込まれた「最新の見聞」は、カビが生えきっていた。

豊臣幕府は中国と同じく海に閉ざされ、時代の針を止めたのである。

 
 
 

隻眼、闇を照らして

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一方政宗は、水をえた魚のように、戦乱を活き活きと泳いだ。

倭寇船を激しく飛ばし、豊家指針を無視した西欧との直接外交、『松平(※1)遣欧使節(※2)』をやってのけ
南蛮流に領内を開発し、制度を取り入れ、東亜にあって独り異形に進化した。

中でも伝統と、南蛮流を融合させた伊達軍の殲滅戦理論は世界の先端にいたり
豊家と兵力が並ぶやいなや、憂いなくそれに襲いかかり、ご存じの通り天下は政宗の手に帰したのである。

海老と鯨

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しかし、共喰いの果てに生まれた新生日本は未熟児同然。
それを統べる米沢幕府の最大動員兵力は——4万程度と推定される。
白村江に派遣された倭・百済遺民軍にすら届かない……数字である。

ひるがえって『世界分割政策』(デマルカシオン)から『世界征服政策』にシフトした
スペイン帝国の動員可能兵力は
40万……!

戦力差は実に……10倍……
冠絶たる実力差

そして、その巨大で尖った(あぎと)を持つ鯨は
すでに日本の頭頂にあたる、千島列島をも呑み込んでいるのだ……

 
 

黄金の国

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闇といえど、ここは黄金の国(ジパング)

頭を押さえつけているスペイン(陛下)の足下には、
この世の誰をも魅了する黄金の蜜が流れている……。

舐めるには指一つ動かすだけでことたる、黄金の蜜が!

枯れた黄金郷(エルドラド)の代わりにスペイン(陛下)
それを望んでいるのは火を見るより明らかである。

これまで、日本が踏み潰されなかったのは、神のご加護という他ない。

おお神よ! 哀れな米沢幕府を救いたまえ!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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我は政宗。
父を撃ち、母に毒をもられ、弟を斬り、最後に秀吉に殺された
冥府より舞い戻りし龍よ。
どうして鯨ごときに気圧されようか。
この——

 
 
 
 
 
 
 
 

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詐欺、狂信、虐殺――
テメーの罪――
最期の審判はオレが下す。

妨げるものは ひとりひとり 正々堂々と 欺き 油断させ 寝首を掻き

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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米沢幕府は闇の中。
だが真夜中にあってこそ、星は輝くのだ。

セウタ攻略から200年遅れてきた男が
信長、秀吉の星を継ぐものとして……
——うって出る。

 
 
 
 
 
 
 

さあ、出航だ!

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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*1
*2
*3

 

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米 沢 幕 府 !


*1 政宗の娘婿かつ、信長→秀吉→政宗と盟約者を渡り歩いた「変節漢」こと徳川家康の六男であり、「一夜街」で知られる大久保長安の主君でもある松平忠輝。越後高田城にあって長安直伝の秘法をよく使い、佐渡金山開発の一翼を担い莫大な財を築いた。
*2  スペイン王との会見に忠輝が遅刻するという失態が仇となり、交渉は実らなかった。だが政宗の恭しい外交姿勢は、後にヌエバ・エスパーニャ副王の訪米という「恩寵」に繋がる。
*3 参考文献 『戦国大名と大航海時代』,『信長征海伝(どうかお笑いにならないで頂きたい!)』 レイアウト協力『オマーン、大洋の帝国』by152氏

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